jazzもClassicもわからない私が働き出したお店では、

classicだけをBGMでかけていて、リピートはしない、

一枚ずつ変えていく決まりだった。

忙しい時間など、もうムリ！と思って、

CDを入れ変えずに再生ボタンを押したりもした。

そんなとき、また一枚の終わりが来た時に、先輩が

忙しいなかでもそっと次のを選んでかけているのを見て、

まだ十代の私は、そんなふうになりたいと思ったのでした。

基本的にclassicしか置いていなかったのに、

一枚だけこれが入っていたのはどうしてだったのかわからない。

先輩たちのように音楽はわからないから、

音楽の話題には入っていけないけど、

なんだかこのピアノが好き、と思った私はいつもこれをかけていた。

お店にとてもよく似合う気がしたし、とても優しくて美しいピアノだった。

中古CD屋さんでこれを買って、大事にずっと聴いている。

jazzとかわかんないけどね、な感じだった私が、

そのあと住み始めた倉敷で、いつも通る道にある

入ってみたいけど入れなかったお店の外にあった、

「アルバイト募集中」の文字を見つけて電話をかけたのは

ほんとはここから始まっていたのかもしれないな、と

ついさっき、思ったのでした。